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漆壁面「源氏」

2026-06-16T22:00
ホテル泉慶コンベンションホール入り口
漆壁面「源氏」―時を超え、縁(えにし)を繋ぐ
今回は、私の漆芸家としての原点であり、多くの縁を運んでくれた作品をご紹介します。 新潟県月岡温泉「ホテル泉慶」のコンベンションホール入り口に設置されている、漆壁面「源氏」です。この作品は、1987年に東京藝術大学漆芸科の修了制作として制作いたしました。

二つの「源氏」の対比
この作品には、私なりの歴史観と美意識を込めました。 画面中央に広がる華やかな金銀の世界は、王朝文化の象徴である「源氏物語」の光源氏の世界を、そして画面の両脇を固める重厚な黒の世界は、鎌倉政権を築いた「源氏」の武家社会をイメージしています。 煌びやかな平安の世から、軍事政権という時代が始まったその過渡期を、漆の黒と金銀の対比で表現しようと試みました。

再会と感謝の記憶
実はこの作品、一時期行方が分からなくなり、私にとって非常に辛い時期がありました。しかし、ホテル泉慶の先代女将さんが非常に温かい方で、困難な状況をうまくまとめてくださり、無事に現在の場所に設置していただくことができたのです。 特に、この作品を設置するにあたっては、コンベンションホール入り口の設計自体を変更してまで受け入れてくださるという多大なるご配慮をいただきました。多くの旅人やお客様が行き交うこの場所に作品を置いていただけていること、あの時の女将さんの深い慈しみと配慮を思い出し心より感謝しております。

縁(えにし)の不思議
この作品を制作していた頃、後の人生で瀬戸内寂聴氏と出会うことなど、夢にも思っていませんでした。 一つの作品が時を超え、場所を超え、思いがけない出会いや縁を繋いでいく。そんな不思議な巡り合わせを感じます。

月岡温泉へお出かけの際は、ぜひこの漆壁面「源氏」の前で、二つの時代の対比を感じていただければ幸いです。
ホテル泉慶 公式サイト


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